History
第12回公演「SUBMISSION」

1999年5月/池袋シアターグリーン


前述した降板した役者ですが、そいつは一応MCRの看板俳優だったもんで
劇団員一同「次はどうなるのか」というミクロな不安の元におこなわれた公演です。
その話をする度に「そいつの事を恨んでるんでしょう」とか言われるんですが
そんな事無いですよ。
アントニオ猪木も裏切り、裏切られ、
その全てを無に帰してきた歴史がありますので
僕もそんな精神でやっていきます、
というか恨みとか感じようがないですね、
そういう人間です、僕もそいつも。

この話も戦争の話ですね、ドリルチョコレートでやった公演の焼き直しです。
戦闘の最前線、とは真逆の地帯。
敵との睨み合いは一応あるが、
ホントに睨み合ってるだけで手出しはお互いにするつもりのない
ある意味平和な環境でのお話です。
兵隊達の唯一の楽しみは、
軍が放送しているテレビ番組「特攻!バキュン」のみ。
その中に出てくる「ミス・ピース」っていうCGで作られた架空の女の子が
みんなのアイドルです。
ミスピースが無作為に選んだ兵隊が、
そいつの電話したい人と電話できるって言うコーナーがあって
(実際にはミスピースがそいつに成り代わって喋るだけですが)
そのコーナーに兵隊達は今日も期待するわけです、
今日こそ俺が選ばれるんじゃないかと。
戦争中に何やってんだって話ですけど、
暇なんでこの部隊の兵隊達はそこに没頭できるわけですよ。
だけどある日、ミスピースが軍全体に向けて放送している番組の中で
この部隊の兵隊の中に裏切り者が居ると言うわけです、
貴重な情報をそいつが持っていると、すぐに引き渡せと。
その情報を狙って敵も味方もこの部隊に攻め入ってくる!らしい。さて、困った。
貴重な情報とか、裏切り者が誰かとか、
そういったサスペンスはこの際置いといて、
仲間は仲間だし、みんな俺が裏切り者じゃないって言うんだからそう思いましょうみたいな、
そうなったら一番辛いのは裏切っている奴だし
もう報いは受けたでしょうみたいな、
そんな流れになります。
最後はみんな死んじゃうんですが、
CGという架空の存在が実際の痛みを浮かび上がらせるって言う、
これでも色々と考えてるんですよ。

この芝居の最中に、
おがわじゅんやに客入れ中ロビーをのぞき見させて、
10人お客さんが入ってくるまで楽屋に戻ってくるなと言ったら
開演しても戻ってきませんでした。
この頃のMCRは、
10人入れば
「今日はたくさん人がいたなあ」
です。